軌跡とその先の

	幼い頃に読んだ本
	名前もストーリーも思い出せないけど、懐かしいんだ
	そよぐ風が優しくて
	頭上の柔らかい声がただ心地よかった
	背中に感じる温もりと 窓から差し込んだ午後の日だまりに
	ほっとして 全部あずけて 汚いこともきれいなことも呑み込んで

	分からないなら聞けばよかった
	胸が痛むよりもまず先に泣いた
	助けを呼ぶ前に助けがきた
	夢を持つ前に夢は叶えられた
	振り返ればいつも光があった

	もう戻らない日々に人は縋る
	いつもは忘れていることなのに
	思いだすととても懐かしくて
	あの日の自分
	あの時、こうしていたら
	あの場所にいなかったら……

	ねぇ教えてよ
	君と僕の境界線
	「おとな」って何?
	不思議だね
	一つ歳が違うだけで
	今日からおとなの仲間入りなんて
	分からない 分かりたくない
	どうすればいい?
	そして 僕は立ち止まったままで
	君は振り向いてくれなくて

	気づいたら重いものばかりだ
	頭には叩き込まれたマニュアルと 放りだされた中途半端な計画書
	乾いた風が行く先を遮る
	この先 何がしたいのだろう 不安ばかりで
	この先の未来 僕はちゃんと地について歩いてる?
	光が見えない
	今やっていることに意味があるのか
	遊んでいるとき 本当にそれでいいのか
	僕は真面目なんかじゃない
	どうすればいいか迷っているだけの
	「おとな」がわからない
	「こども」でもない ただの人

	未来に希望を持てば
	前向きになれば大丈夫だなんて言うけれど
	そんな気持ちになれない時なんて
	たくさんあって 
	夢に陰りがさす
	それは自分にあっているのか
	答えはいつも出ないまま

	ねぇ、教えてよ
	頑張ろうとすれば苦しいから
	努力が形にならないのは
	それが努力ではないから?
	今日は今日 明日は明日
	そんな風に 割り切れたらいいのに
	…分かってる 本当は 君は
	振り向かないんじゃなくて
	困ったように 僕が追いつくのを
	歩きながら 見ていることを

	一人でできない事も多いけど
	自分だけで乗り越えなきゃいけないことも多いね

	「おとな」って何? それはずっと分からないのかもしれない
	「おとな」になっても きっと僕は 迷ったり 悩んだりするのに変わりないから
	ねぇ、でも いつか 「おとな」になったと思える日が来たら
	君と笑っていられるかな?


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