「音(ね)」


奇跡なんてない 神さまなんていない
本当に奇跡があったなら 本当に神さまがいたなら
絶望なんて与えないはず

あなたは弾き続ける
光射す場所で ひたすらに
ねぇ、何を信じているの

パイプオルガンの音(ね)が
祝福の鐘のように鳴り響く
なんて幻聴

欲しいのは 何てことはない
何も起きない穏やかな時間だけなのにね
あなたが笑っている未来を望むだけなのに、ね

涙を隠そうとしないでよ
そうやってあなたはいつも…
もっと寄りかかってくれていい そう告げれば
あなたは 私がいるだけで十分だと
微かに 笑みをもらすだけ

運命だなんて信じない 必然だなど思いたくない
それでも刻(とき)というものは無常で
確実に始まりと終わりは近づいていて

あなたは弾き続ける
闇を一人 抱えこんで
一体、何を思っているの

滑らかなピアノの旋律は
静かで そして力強く
まるで祈りのよう
…そんな気がした

欲しいのは 何てことはない
ただあなたと共に生きる時間だけなのにね
あなたが苦しまない未来を望むだけなのに、ね

振り向いてはいけない 前を向いて
掴んだ手だけは離さない
永遠なんてないけれど
抗い続けよう この手を汚しても
ただ待っているだけなんて嫌だから

そう、あなたの音(ね)が聴こえる限り


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