春さる

	白い野に タンポポが広がった
	澄んだ空気の中 やさしい黄色の笑顔を 咲かせる
	夢の中で 重なった あなたと私の手のひら
	少し冷たい風が 気持ちよくて
	「時」は再び刻みだした
	それは 芽を出したばかりの 始まりの合図

	あなたは 笑うでしょうか
	私が ここで夢見ていることを
	あなたは どう思うでしょうか
	私が この地に 別れを告げられないでいることを

	遥か どこか分からぬ場所に 届け
	永遠(とわ)に愛をこめて 響き渡るように
	空に 大地に 風に
	想いが眠るこの場所で 歌を歌おう
	ただ あなたの願いを 私も
	願っている だからこそ…

	花が舞う 時に激しく 時に弱い 雨粒
	そこは 夢 過去は 夢 穏やかに在る
	頬を流れる涙が 唯一の現実
	動いたその瞬間 壊れる世界
	まだ 覚めないでと 願うのに
	覚めないことに 悲しみを覚える

	あなたは 泣かないで
	私は 今も「生きている」から
	あなたは 笑っていて
	私が この地に 別れを告げたとしても

	遥か どことも知れぬ場所に 届け
	愛に満ちた詞(ことば)が 大地に沁みこんで
	希望を 夢を 未来を
	光とともにあれ 闇を味方につけて
	私とみんなと あなたのために
	祝福の歌を 送ろう

	決別の言葉を 告げよう

	白い野に 春は訪れた
	澄んだ空気の中 やさしいあなたの笑みを 思いだす
	何かを失くしたとしても 世界は四季のように
	流れを止めず 廻っているから
	暖かさに誘われて 覚めた夢
	そして 私はふらりと この地を 旅立つ


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